風の前奏曲

「人生は キミ自身が決意し 貫くしかないんだよ」
岡本太郎の言葉である
芸術家はいつも
自らの神の声を聞き 突き動かされる
その声に耳をふさぐと
自分が自分で無くなる恐怖に
いつまでも怯えなければならない
そんなものに怯えるくらいなら
たとえ命の危険を冒しても 自らの決意を貫きたい
貫くことが歓びであり 使命なんだと知っている者を
芸術家という
近代化の波の中で
国家より民族音楽を禁止された
ラナート奏者のソーンは
それでも 最後までラナートを奏でようとする
「木は しっかりと大地に根をはっていれば 嵐にも耐えられる」
自宅を捜索に来た軍隊の人間に
毅然としてソーンは言う
伝統文化を失った民族は
根をはるべき大地を失った木々のように
その存在自体も危ういのだ
支配する国は 支配した国の
まず 言葉や文化を奪おうとする
音楽は 人のこころを癒し 慰めるもするが
人のこころを 鼓舞し 駆り立てることも出来る
音楽の調和と
軍隊の統率とは その性質が違う
劇中 オルガンで奏でられるインザムードの音に
ソーンがラナートの音を合わせる場面は
まさに・・・音の調和
音楽好きのわたしには たまらない場面である
弟子入りした時に 師匠である父が
最初に語る言葉がある
常に正しい生き方をすると約束しなさい
音楽を悪用したり
名声のために人を踏みにじらぬこと
真に音楽を敬い理解すれば
その時 視野が開け
未踏の境地に達し
至高の歓びを得るだろう
自らの思いを貫き通したソーンは
失意ではなく きっと喜びに包まれていたのだ
・・・そうあってほしいと思う
恋人までの距離(ディスタンス)

もし・・人生が旅だとするなら
旅の列車の中で
行きずりに出会う人の中に
運命の人がいるかもしれない
今はただ 行き先が違うだけ
長距離列車に乗り合わせた人々は
それぞれ 別々の目的を持って
別々の目的地を目指している
その列車は
目的地へ行くために たまたま・・・・
選んだ列車なのだ
ともに生きるということは
ともに歩くということ
ウィーンの夜を
ともに歩くセリーヌとジェシーは
出発までの短い時間に
長い長い 人生の時間を凝縮させる
凝縮された時間は・・・想いは
色あせることはない
場合によっては
しだいに密度を増してゆくことさえある
こころの核・・・のように
それから9年後の製作・・・という続編は
9年という現実の時間が
さらにリアリティーを深める
しかし 続編においても
未だ 旅は終わらない
ふたりの旅は まだ続く
・・・・・・続いてほしいと思う
たとえ ふたりが
同じ目的地を目指し 同じ列車に乗ったとしても
人は いつまでも
恋人どうしでありたいと思うから
サンキュー・ボーイズ
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人生は不思議なもので
何かをめざして 歩き出そうとすると
必ず 行く手を遮るものが現れる
爪先を
今までとは別の方向に向けるわけで
風向きが変わるのは 当たり前なのだが
それにしても・・・・・
わたしにも
よく そういう事が起こる
そういう時には いつも
ひとりぼっちを感じて・・・
ひとりぼっちを感じては
かたくなに 自分の殻を閉じてしまう
まるで 子供のようだ
いくら殻を閉じたところで
人は ひとりでは生きてゆけない
出会う人や 出来事は
未来の自分にとって
すべて必要なものだろう
主人公のビバリーにとって
警察官の子供に生まれたことも
15歳で母親になったことも
夫のレイが
ジャンキーだったことも・・・
実話に基づく物語は
ビバリーがすべてを受け入れ
それでも
自分を偽らなかった生き様を映し出す
気がつけば わたしも
自分を取り巻く人々とのかかわりの中で
成長してきたのだ
人生は レースではない
誰かと競争しているわけではないのだ
あせることなく
目標を見失わないように
一歩一歩 歩いていけばいい
きっと うまくいく
かもめ食堂
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「大事なもの・・入ってたかなぁ」
行方不明のスーツケースを思いながら
マサコがつぶやく
大事なもの・・・
人生の さまざまな時間の中で
誰かを守り・・・また
自分を守るための
こころの支えのようなもの
けれど 大事なものは・・・
いつか 姿を変え
その価値さえも変わってゆく
店主のサチエに
引き寄せられるように 集まってくる人々は
ここで しばし居心地のいい時間を過ごし
少しぶれた 人生の軸を修正してゆく
押しつけることもなく
求めることもなく
ただ自分と人を・・・・人の想いを信じて
日々を送る彼女が言う
「人はみんな変わっていくものですから」
サチエの 凛とした生きる姿勢は
健気でありながら 頼もしい
ちなみに かもめ食堂のメインメニューは おにぎり
「おにぎりは 誰かに作ってもらったほうが美味しい」
サチエの 亡き父の言葉には
わたしも賛成である
想いがこもったおにぎりは 確かに美味しい
しょうが焼き定食 とんかつ定食 それから
シナモンロール・・・
別に変わったメニューがあるわけではない
それでも 映画に登場する料理たちは
不思議に美味しく見える
天空の草原のナンサ
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こころのどこかにある 柔らかい場所
その場所が
何故 柔らかいのかもわからないけれど
時々 その柔らかい場所に触れるとき
あぁ わたしは まだ大丈夫なんだと・・・
不思議な安心感を覚える
子供たちがあんなに可愛いのは
大自然の中で生きているからだろうか
モンゴルの大草原の上で
命はみんな 平等に輝いているように思う
馬をあやつり 羊を追う 幼いナンサも
命を守るために ハゲワシの群れに向かっていく
犬のツォーホルも
魂のレベルでつながっているのだろう
冒頭の犬の埋葬の場面に
モンゴルの人々の
命への思いを感じる
子供たちの自然な仕草は
演技ではなく 日常生活の一場面だという
冬にはマイナス30度まで下がる
きびしい自然から
人々は 都会へ向かう
今だから撮れたのだと
あと何年かのちには 記録映画になると
ダバー監督は言う
人々の生活は変わり
住む場所も変わってゆく
しかし それでも
命の輝きは・・・子供たちの輝きは 変わらない
クジラの島の少女
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少女パイケアが最後に語る言葉が
わたしのこころに 印象的に残っている
「わたしは預言者ではない
しかし 明るい光は見える」
人を導くことの出来るヒーローは
きっと 明るい未来を信じている
人々を 惑わさず
人々を 責めず
人々を 罰しない・・・ものだと思う
人々の足元を照らす ランプのような灯り
あるいは
人々の明日を照らす 灯台のような灯り
ヒーローは けっして
人々の行く手に 注文をつけない・・・と思うのだ
人は 引かれるものではなく
自ら進む・・・生き物だから
祖父コロの守ろうとしていた伝統を
誰よりも理解していたのが
少女であるパイケアだった
だが伝統は 女性を
自ら進むものだとは認めない
マオリを想う気持ち 祖父を想う気持ち
パイケアの想いが あふれ出した夜
彼女の想いに答えたクジラたちが
砂浜に打ち上げられる
クジラたちが
命をかけて教えようとしたもの
パイケアが
命をかけて守ろうとしたもの
マオリの言い伝えを コロが語る場面がある
「パイケアの糸を編み 我らの絆を強めよ」
まさに崩壊していこうとする
村人や家族の絆を
クジラとともに
もういちど パイケアが編みなおしてゆく
それは 未来を信じるヒーローの姿だと
わたしは思う
舞台よりすてきな生活

生活の中には意外と
小さな笑いが散らばっていて 同時に
小さな感動も 隠れていたりするものだ
誰かといっしょに 幸せになりたい人は
きっと そのことに気がつく
子供嫌いの劇作家ピーターが
プールで鼻血を流す場面には
思わず声を出して笑ってしまった
妻メラニーとの言葉のやり取りも
おしゃれで 暖かい
生活というのは 誰かとかかわること
そして 誰かと
分かち合うことだと思う
さまざまな感情や想い
大切な時間
分かち合える人がいるのは幸せなことなのだ
ピーターの闇の部分を象徴しているようなストーカーは
ピーターが 人と分かち合えない部分
しかし隣の犬の死が その闇を
いっきにピーターの中から消し去る
巧みに作られたストーリーは
ピーターの中にある「父親」を引き出し そしてさらに
「父親」でない現実を 突きつける
足の不自由な少女エイミーとの別れの場面に
思わず 目の奥が熱くなり・・少し哀しい
最後にピーターは 産婦人科の待合室で
妻メラニーと並んで座っている
その姿に ぬくもりを感じるのは
観ているわたしに メラニーとピーターの・・・・夫婦の
愛情が伝わってきたからだろう











