モナリザ・スマイル

・・・・・たとえば
水槽で生きる魚たちは
食べ物の不安や 命の危険を感じることはない
水槽のルールに従っていれば 何事も起こらない
水槽の中で 何代も何代も 世代交代をくり返し
平和な時が流れてゆく
やがて自分たちが
海に生きていた記憶も消えてしまって
誰も海について語れるものがいなくなった頃
ある日 何かのきっかけで・・・ただ一匹だけが
遠い過去の記憶・・海の臭いを思い出したとしたら・・・
その臭いは何処からやって来るのかわからない・・・わからないけれど
どうしようもなく こころを掻きたてて
その魚が叫びだしたとしたら・・・
「これが わたしたちの 生きるべき世界の臭いなんじゃないの」
その叫びに 何匹かの魚たちも共鳴しはじめ・・・
その時 水槽の中の均衡が崩れ
水槽のルールは その根幹から揺らぎ始める
このルールは 何者かが意図的に作ったもの?
その意図は?・・・何のために?
たとえ何かに気づき始めたとしても 魚たちには海に帰る術がない
しかし人間は・・・どうだろう・・・・
解き放たれた ある人間は
海のあまりの広さに困惑しながら 大海をさまよい始める
そして さまよいながら・・・こう思うかもしれない
「水槽の生活も 悪くなかった」
あるいは・・・
戸惑いながらも やがて大海の生き方を身に付け
どこかに落ち着くかもしれない
その道のりを振り返り・・・・
「自分が選んだものは 間違いなかった・・」
その時 水槽と海の壁が消えて・・・初めて
人生の意味が見えてくるかもしれない
わたしは・・・この 自分でしか生きれない人生において
何と出会い 何を感じ 何を選んできたのだろう
何処に向かい 何を成そうとしているのだろう
モナリザは
自分の生きざまを振り返って
少し照れながら 微笑んでいるのかもしれない







